松尾大社には、3つの庭からなるすさまじい庭園があるが
「蓬莱の庭」はそのうちの1つだ。
パンフレットには「蓬莱神仙の世界。周囲を回遊しながら
眺めると、仙境に遊ぶ感がするといわれる。」と書かれている。
小さな竹の門をぬけ、飛び石に案内されて蓬莱の庭に入る。
鶴に見立てた池には、大きな庭石がいくつも天に向かって伸び
白と黒の荘厳な世界を創っている。
奥には、龍門の滝もあるようだ。
池のほとりに近づくと大きな鯉が悠々と寄ってくる。
立派なひげだ、龍と同じだな、と思って見ていたら
「龍になりますからねえ」と先生が言う。
やっぱり鯉は龍になるんだと、嬉しくなった。
それにしても白と黒しかない。
鯉までみんな真っ黒だ。
敷石の小径をぐるっと歩きながら、私は先生に言ってみる。
「神仙の世界は、金色かと思っていました。」
「白と黒ですよ。」
白と黒だけだと、なんだか寂しくて冷たい感じだなあ。
あきらめずに言ってみる。
「ええと、数霊①と⑨?」
⑨なら金色が入っているんだけど・・・。
「①と⑩です。」
やっぱり理解できずだまっていると、先生が言う。
「すべての色をまぜると、黒になるでしょう?」
「・・・はい。」
そして、
「これぞ神仙の世界ですよ。すばらしい!」
と笑いながら先へ行ってしまう。
私が理解できていないことを、先生はお見通しだ。
でもまあ、なんでもない。
そのうち、突然理解する瞬間がくるから。
いつもそうだ。
「あそこで、おみやげを買えますよ。」
小さな竹の門でこちらを振り返りながら、先生が言う。
えっおみやげ屋さん?
ほんとだ、木々の若葉の間から、のれんが見えてきた。
お昼に茶店でいただいた、菜の花のおつけものがあるといいな。
私は飛び石をぴょんぴょん飛ぶようにして、先生の後を追った。